函館食道楽プラス

函館で食べたり、見たり、聞いたりしたことと、仕事の話とか。

函館の街並みが変わるということと、

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個人的になんとなくお気に入りだった建物。この写真の右に写っている『k.エデン』という青い屋根の建物。

建築の専門家ではないので何がどうという語り方はできないのだけれど、なんとなく上空から見たら正方形のように見えそうな屋根の形だとか、2階の壁面全面がガラス窓になっていたりだとか、築年数が経過しすぎていて、建物全体が大丈夫か?という印象を受けるくらい歪んで建っていることだとか、その名前「k.エデン」ってなんだよ、なんの店だよ!とツッコミを入れたくなる所だとか、街の繁華街がこの地区から徐々に駅前・五稜郭方面へと移っていったことで近代化からは少し置いていかれてしまった西部地区の雰囲気とマッチしていること……そんな部分がなんとなくお気に入りだったのです。

さて、不動産関係にお勤めだというjhmさんが綴るブログ「I shall be released」の最新記事「函館の故郷がまた一つ消える」でついにこの「k.エデン」の看板がある建物が壊されるという記事が上がっていました。

記事によるとこの建物は「遊郭」であったり、「パチンコ屋」だったり、「喫茶店」だったり、有名な世界的舞踏家・大野一雄の生家だった可能性もあるといいます。

この建物がある弁天町付近は1907年の大火事以前は遊郭などが立ち並ぶ函館の一台繁華街だった場所。その後も昭和40年くらいまでは結構な商店街として賑わっていたという話もあり、そんな歴史的な背景の片鱗をちらりと感じさせてくれるような場所でもありました。

ちなみに「弁天町 k.エデン」でgoogle検索するといくつかのブログ記事などがヒットします。

SARAVAH ! 喫茶Kエデン - JKH◆純喫茶ヒッピー◆ニッポンキッサツアー - Yahoo!ブログ

軽食・喫茶 K エデン : ぎんしおと出舌瑠~ へい一丁!

津田沼カメラ | 軽食・喫茶 Kエデン

なんとなく目につく、ちょっとしたランドマークのような場所だったのかもしれません。

私も含めて、ある種の人々にとって「k.エデン」の解体はショックと驚きとガッカリと切なさと諦めを感じる出来事だったのではなかろうかと思います。それでなくても、この2~3年…もっと言えばもうずっとそういう流れなのでしょうけれど、函館のあちらこちらで建物の解体が進み、空き地が増え、駐車場になったり、空き地のまま放置されていたり、なんとも寂しい有り様になってきているように感じます。

私の生まれは函館ではないのですが、好きでこの街に住み続けて10年以上が経過したわけですけれど、好きな風景がずんどこ失われていっているような気すらします。もちろん、建物の雰囲気だけが好きというわけではなく、好きの割合を大きく占めているのはヒトだったり、海と山の雰囲気だったり、空気感だったりするのですが、好きな街が空き地という穴ぼこだらけになっていったり、大してお金がかけられていないイミテーションのようなレプリカで溢れていくのは、全く気が滅入る流れです。

とはいえ。

私自身は西部地区だったり大門に住んでいるわけではないですし、歴史感がある建物に住んでいるわけではないですし、日常生活と密接に関係しているわけではないのです。

実質的にその場所で生活をしていたり、現実的な面を直視していかなくてはならない関係者の方々にしてみたら、当事者でもないのにちゃんちゃら可笑しいと思われる可能性だって少なくないでしょう。

例えば、何年か前の弥生小学校の建て替えで議論があったとき、実際に小さな子どもをその小学校に通わせている親御さんの話を聞くと、やはり老朽化した小学校の建屋では子どもが危なっかしいし、きれいな学校で勉強させてあげたいという意見も聞いたことがあります。自分に子どもがいてもそう思うかもしれません。

空き家の解体問題についても同じで、身近にレトロでカッコイイけれど誰も住んでいない廃屋がたくさんあって、夜は街灯も少なく不気味な雰囲気になっている……ということであれば、近くに住んでいる人々にとってはなんとも嫌でしょう。そりゃあ嫌ですよね。もう函館に住んでいないかもしれない所有者としても空き地にしてしまいたいと思うかもしれません。住んでいない建物の維持費なんて出したくないですもんね。今後ずっと不況が続くわけですし。

その一方で、

函館―昭和ノスタルジー

函館―昭和ノスタルジー

 

 いまや飛ぶ鳥を落とす勢いのぶらんとマガジン社が発行する北海道情報誌「HO」の函館特集や、同出版社が先日出版した「函館─昭和ノスタルジー」というようなムック、かつて男の隠れ家なんかで特集されたのも同じように「レトロ」という切り口から函館を編集したものであり、本州やその他地域から訪れる観光客が観光地として求めているのもこの「レトロで懐かしい街並み」だったりするわけです。

もちろん、美味しい食べ物というのもありますし、近年道や市はその部分のみを「推し」で行こうと考えているようにも見えますが、やっぱりそれだけでは弱いですよ。建物や雰囲気ってのは、お金に直接結びつかないかもしれませんが、「函館に行きたい!」と思わせる重要なファクターだと思います。

実際の函館がレトロかどうかはともかくですし、個人的にはレトロを押し付けられるのは大嫌いなのですけれど、それでも世間からみたニーズは確実にあるはずです。そして、レトロというのはいわゆる市に認められ修繕にも費用が援助される「歴史的建造物」だけではなく、街に古くから残る民家たちも一緒に奏でているもののはずなんです。

何年か後、「函館?行ってガッカリ観光地だよ」と言われないように、もっと全体的に函館の強みを棚卸ししてみたり、考えてみたほうがイイと思うんです。函館市が全体的に考えた結果、いまの流れがあるのならば、その考えや調査のプロセス、マーケティングのことも見せて欲しいし知らせて欲しいですしね。

現実的な問題として、維持管理にはお金がかかるし、ぶっちゃけた話、私なんてただの傍観者の立場でしかありません。原発のモンダイも同じく、「じゃあどうするの?」と突っ込まれたらぐぅの音もでませんけど、、、